いつの日かまた、雨の散歩を

あの日は雨。私との待ち合わせに遅れて現れたその人は、謝りもせず何故か不機嫌な顔をしていました。謝りたいけど、素直に謝れない。そんな子供っぽさを愛らしく思えたのは、私の方が5つ年上だったからでしょうか。当時の私は無理して彼氏を作らなくてもいいかな、と思い始めていたところで、まさか年下の学生に惹かれるなんて思ってもいませんでした。掠れたような声、関西訛りのない柔らかい話し方。雨の中を歩きながら、彼は学生生活の話をし、私は仕事の話をしました。ただそれだけなのにあんなに楽しいと思えたのはいつ以来だったでしょう。夜明けの月は細く、美しく輝いていました。彼には想いを寄せる人がいました。私と彼が付き合うなんてありえない事。これからは彼の姉のような存在になろう、私はそう心に決めました。大学を卒業したから地元に帰る、と彼から連絡があったのはそれから数ヶ月後の事でした。私は仕事を休み、バス乗り場へ向かいました。もともと恋人でも何でもない関係。寂しくなんてない。いい歳した大人なんだから・・・。そう自分に言い聞かせながら、笑顔で彼と別れました。それから10年が経ちました。彼とは今でも時々連絡を取り合っています。またいつか会いたいね、と言いながら時は過ぎて行くのでしょう。いつか、きっと、また会う日まで。私はこれからもずっと彼を想い続けるでしょう。

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